記事一覧

Some Key Differences between Japanese and English, and Their Impact on J→E Translation

Ⅰ.根本的に異なる言語の英語と日本語

<英語>
・アルファベット
(抽象的で不規則的な文字と読み方の関係)
・構文(シンタックス)依存  
・階層的論理による構造 
・文脈に依存しない
・「時制の順序と一致」を強調する

<日本語>
・漢字とカナ
(具体的、視覚的、そして規則的な文字と読み方の関係)
・助詞依存
・形式的な関係論理による構造
・文脈に依存する
・相(アスペクト)を強調する

Ⅱ.J-E翻訳する際の考慮すべき言語要点の概略

(A) a 対 the
(B) 可算名詞 対 不可算名詞
(C) 単数 対 複数
(D) 句読点
(E) 構文(シンタックス)
(F) 因果関係
(G) 独立節と従属節
(H) 能動態 対 受動態
(I) 移行詞と連結語としての不定詞の使用
(J) 主語の省略および主語と動詞(数など)の一致
(K) 懸垂前置詞・分詞修飾語
(L) 時制 対 相


*いくつかの例文を挙げます*

(D) 句読点

(英語での句読点の重要さ)

句読点がないと英語は下記のように見えます。
withapolyethylenefilmof100μmthickness30mmdiameterasa
substrateathincopperfilm2asillustratedinfig1wasformedto
01μmthicknessbyvapordepositionovertheentirebacksidesurface
thesidesurfacesandanareaofapproximately05mmwidthalongthe
peripheralmarginoftheuppersurfaceofthepolyethylenefilm1

しかし、句読点を加えると下記のようになります。
With a polyethylene film of 100 μm thickness, 30 mm diameter as a substrate, a thin copper film 2 as illustrated in Fig. 1 was formed to 0.1 μm thickness by vapor deposition over the entire back-side surface, the side surfaces, and an area of approximately 0.5 mm width along the peripheral margin of the upper surface of the polyethylene film 1.

(E) 構文(シンタックス)

(語句レベルでのシンタックスの問題)

1.「阪神大震災」
X : "The Hanshin Great Earthquake"
○ : "The Great Hanshin Earthquake"

どうして?
なぜなら、英語で"The Hanshin Great Earthquake"と言うなら、"Hanshin Small Earthquake"と連想してしまいます。

2.「軸受けの製造方法」
X : "a manufacturing method of a bearing"
○ : "a method of manufacturing a bearing"
○ (streamlined): "a bearing manufacturing method"

(節レベルでのシンタックスの問題)

日本市場における女性の化粧品の英文から
"Improves moisture absorption for your skin" 
(「お肌の水分吸収力を改善します。」でしょう。)
vs.
"Improves your skin's ability to absorb moisture"

(文章レベルでのシンタックスの問題)

「前記スラリーをスプレードライアー等の手法によって、顆粒を作成する。」

弱点があり、分かりにくい
"Granules are prepared by a technique such as spray-drying the slurry."
- (Could something else besides the slurry be treated to produce the granules?)

まだ弱点あるが、分かりにくさは減少
"Granules are prepared by spray-drying the slurry or by a similar technique."

強い
"Granules are prepared from the slurry by spray-drying it, or by means of a similar technique."

(L) 時制 対 相

・動詞によって表す行動の時(順序)
vs.
・動詞によって表す行動の完成度をどれぐらい差異化できるか 

*例文*
「ハブ 10 の外周壁よりも短く立ち上げられた環状壁部 11」
間違った訳
an annular wall portion 11 _that has been stood_ shorter than the outer circumferential wall of the rotor hub 10
正しい訳
an annular wall portion 11 _standing_ shorter than the outer circumferential wall of the rotor hub 10.

Ⅲ.雑則で難しい点

・「等」の対処 :一般的概念の欠如
・「の」の翻訳でしてはいけない事 :「の」の正しい翻訳はいつも"of"と思い込まない。
 - 固有の性質: 「肌の色」 -"the color of the skin"
 - 数量的な性質:「肌の色値」 -"the color value for the skin"

• 過剰な翻訳
 -「防縮加工を施した生地」
X i. cloth on which a shrinkage-prevention process has been implemented (?)
X ii. material having been subjected to a shrinkage-prevention process (?)
X iii. fabric that has undergone shrink-proofing (?)
○ --> "preshrunk fabric"

米国出願に対する特許クレーム翻訳 <For>対<That/Which>と<修飾する分詞>対<従属節>-Part2

有名な "Landis on Mechanics of Claim Drafting" に載っている inferential claiming では、別の要素を記載している節の中央でクレームの新しい要素を導入していること、またはクレームで以前に導入されている要素以外の新しい要素の働き、または作用を記載していることの意味を述べています。

そして、クレーム要素を記入する際に関係代名詞の用法を避けることは、推測的な主張を避けるのに役立ちます。従って、Rule No.2 の実用にも役立ちます。

前の例題に戻ってみましょう。Rule No.1 を適用する前の例題の最初の記載が "a shaft that on one end carries a gear train." に示されています。ここでの問題は、節の叙述的な本質である "that on one end carries a gear train," の歯車列が実際のクレームの範囲に含まれているのかどうか不明慮なことです。しかし、従属節を分詞修飾に入れ替えることにより "said shaft . . . carrying a gear train" となり、歯車列は主張している範囲の一部でもあることが明確になります。

第2の記載 "a pinion . . . that engages with a rack that is disposed on the frame"はどうでしょうか?この表現の記載の rack が、クレームの範囲に含まれているのかは不明慮です。しかし、修正した "said pinion for engaging with a rack disposed on the frame." の表現において、この場合の rack はクレームの範囲に含まれていますか?答えはノーです。この表現の記載は説話的ではありませんが、この pinion の機能によって、pinion が記載に定義されています。つまり、"for engaging" です。しかし、クレームの範囲に rack は実際には含まれていません。

クレームに rack を含めるには "said pinion engaging with a rack disposed on the frame." のように、記載されている "for" を単純に削除する修正をしなければいけません。

Inferential Claiming の問題は、例によって単純に例証するよりも説明することが難しいことです。しかし、最初に問題を解決できクレーム翻訳でこのことを回避すれば、ますます理解できるようになります。

米国出願に対する特許クレーム翻訳 <For>対<That/Which>と<修飾する分詞>対<従属節>

私が、大阪の特許法律事務所で勤務し始めた頃、英語特許翻訳のチェックとクレーム補正案の校正をしていたのですが、アメリカの弁護士から、私が英語を十分に配慮(プライドをもって!)しているのにもかかわらず、必ずクレームを変更されることに気付きました。何人かの弁護士達による変更内容のほとんどは、 "that" と "which" の削除、そしてそれを"for"に置き換えることが最も一般的でした。

例題として、私の翻訳仲間から最近届いた下記のクレーム要素の訳文を訂正して、米国の弁護士に提出されたとします。

(A) "a blower that is installed downstream of said chimney and that draws in exhaust gas"

米国の弁護士が、USPTOで出願する翻訳文は間違いなく下記のようになります。

(B) "a blower, installed downstream of the chimney, for drawing in exhaust gas"

私は、米国の弁護士達がいかにも何か必須で重要な仕事をしているかのように、時間を費やしていると思いましたが、私自身が特許出願手続を長年経験した後、一般的に米国の特許実務家が、そのような変更をする理由が分かるようになりました。

簡単に言えば、上記の訳文(B)が米国実務の基本であるのには2つの理由があります。

私がRule No. 1としている第1の理由は、

「クレームは説話的ではなく断言的でなければならない事です。」

私がRule No. 2としている第2の理由は、

「Inferential Claimingを回避しなければならない事です。」

なぜU.S. 実務に基づくこれらの規則ができたのか、また通例に従っているのかに関する私の見解を下記に示します。

- Rule No. 1 -
M.P.E.P. 706.03(d), "Rejections Under 35 U.S.C. 112, Second Paragraph"は、§112でクレームを拒絶する際に、審査官が利用できる下記の形式文("¶ 7.34.15 Rejection Under 35 U.S.C. 112, Pro Se")を載っています。

「クレームは、_説話_形式で不明確で、機能的または運用的な言語が多いのです。対象発明を構成する構造を明確に確実に規定しなければなりません。」
(“_  _”は著者による。)

さて、多くの英語ネイティブスピーカーにとって、上記(A)のような表現 "a blower that is installed downstream of said chimney and that draws in exhaust gas" は、断言的で平叙的というよりも説話的で叙述的です。

さらに、Federal Circuit(米国連邦巡回控訴裁判所)は、かなり以前にSRI International v. Matsushita Electric Corp. (1985) で、「明細書は教示している。クレームは請求している。」と記述しました。つまり、明細書で作成されている説明と同じ方法で、クレームを作成してはいけません。表現 "a blower that is installed downstream of said chimney and that draws in exhaust gas" は、単純に明細書の説明から繰り返されているようです。

もう一つの例を下記に示します。日本語 「ガスの流れを制御するバルブ」 がクレーム要素に使用されるとします。この表現に対する最も自然でふさわしい翻訳が、特に特許明細書の説明に使用される上で、"a valve that controls the flow of a gas" となります。しかし、その翻訳が米国実務上のクレームにおいて、どのように読まれるのか考えてみましょう。つまりある意味、この表現は "a valve that just so happens to control the flow of a gas"(「ガスの流れをたまたまちょうど制御するバルブ」)になります。このように読まれると、この表現は世界中のどのようなバルブでも対象にすることができます!

しかし、その日本語を "a valve for controlling gas flow" とすれば、どのような種類のバルブがクレームに規定されているのか明確に定められた語句になります。そして"the flow of a gas" を "gas flow" に変えることが "the flow" と "a gas" の曖昧さをなくすと気付いてください。 "the flow" と言っても、読者には何の流れなのか疑問を抱かせます。上記において流れについて指摘していましたか?或いはそのバルブはガスの膨張などではなく、流れを制御することを伝えたいのでしょうか? "a gas" と言っても読者に対して、ただ流れているだけのガスであれば、どのようなガスでもよいのか、または発明にとって重要で特別なガスを意味するのか疑問を抱かせます。

ちなみに、その日本語を"a gas-flow control valve"にすればより明確で平叙的になります。しかし、日本の原語からはあまりにもかけ離れてしまいます。

他の例、下記を日本語のクレーム翻訳の一部とします。

a shaft that on one end carries a gear train;
a pinion that is mounted on the other end of the shaft and that engages with a rack that is disposed on the frame

(ここで、フレームという構成要素が、すでにクレームに記載されたと仮定します。) 従属節 "that on one end carries a gear train" は、平叙的というよりも説話的です。このクレーム要素の記載は、ほとんど "a shaft on one end of which a gear train is carried" のほど説話的で不明瞭です。このような表現がクレームとして成り立つでしょうか?仮にそうならば、単にどのような種類のシャフトを記載しているかについて述べているだけでしょうか。あるいはシャフトの機能を記載しようとしているのでしょうか?言い換えると、従属節は形容詞または副詞ですか?例題の他3つの従属節も同様かもしれません。つまり、"that is mounted on the other end of the shaft" と "that engages with a rack" と "that is disposed on the frame" です。

Rule No. 1を適用して以下の通りに修正することにより、クレーム記載の説話的で不明瞭な言語を避けることができます。

a shaft, said shaft on one end carrying a gear train;
a pinion mounted on the other end of the shaft, said pinion for engaging with a rack disposed on the frame
- - -
Rule No. 2 については次回へ。。。

ページ移動

  • 前のページ
  • 次のページ